今回は、歌にとっても重要な横隔膜、そして呼吸のメカニズムについて解説するよ。
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横隔膜は胸と腹の境界線
人や動物は、食べ物からとり入れた栄養と呼吸から得た酸素をもとに、体内でエネルギーを作り出しています。
そして、そんな呼吸に欠かせない器官が横隔膜です。
胸腔と腹腔
人間の胴体は、大きく「胸腔(胸部)」と「腹腔(腹部)」に分かれています。
肺や心臓が入っているのが胸腔。
息を吸うと肺が膨らむので、風船とか空気をイメージするとわかりやすいでしょう。
対して、腹腔には胃や腸、腎臓、肝臓などの消化器系の内臓があります。
体積を保ったまま、ある程度まで形を変えることができるので、よく水風船や液体に例えられます。
横隔膜
胴体のほぼ真ん中に位置していて、前述の胸腔と腹腔を隔てているのが、横隔膜。
ドーム状の膜のような形をしていますが、ペラペラとした薄いものではありません。
厚みも伸縮性もある力強い筋肉です。
ちなみに、管理人ソメイも大好きな焼き肉のハラミは、牛の横隔膜。
あれを思えば、牛ほどでないにしても、人間の横隔膜も薄いシートみたいな膜じゃないことが想像できますよね。
肺
呼吸器官といえば、まっ先に思いつくのは肺でしょう。
空気中の酸素をとり入れて、不要な二酸化炭素を出すのが、肺の役割。
人が口や鼻から呼吸をすると、気管から空気が左右の肺へ送られます。
その先はどんどん枝葉状に分かれていって、先端にある「肺胞」というぶどうの房のような空気の袋に行きつきます。
この肺胞の中にある酸素が、血液に取り込まれるのです。
いまさら聞けない呼吸のしくみ
私たちがふだん何気なくしている呼吸ですが、実は非常によくできたメカニズム。
ボーカリストの皆さんは、そんな無意識でしていることを、意識下でコントロールできるようになりましょう。
肺は動かない?!
息を吸ったり吐いたりするたびに、肺が一生けんめい動いていると思っている人は、少なくないはず。
でも実は、肺自体が動いているわけではありません。
肋骨の間にある筋肉(外肋間筋)や横隔膜が動くことで、間接的に膨らんだり縮んだりしているのです。
そして肺に空気を送り込むために、主に外肋間筋を使うやり方を胸式呼吸、横隔膜を使うやり方を腹式呼吸と呼びます。
どちらかだけではなく、偏りがあったとしても外肋間筋と横隔膜の両方を使って行われるのが、通常の呼吸です。
呼吸のしくみ
呼吸のしくみが理解できれば、ボイストレーニングや歌の練習中に、どうやって自分の体が動いているのか、イメージすることができるはず。
より効果的に、腹式呼吸を強化することができるでしょう。
吸うとき
息を吸うと、外肋間筋が伸びて胸腔が広がります。
このとき、胸腔は横隔膜を押し下げてもっとスペースを作ろうとしますが、下に押された腹腔は体積が変わるわけではないので、周りに広がるようにつぶれた形に。
その様子はまるで、上から押された水風船のよう。
こうして横にも下にも膨らんだ肺に、空気が入ります。
吐くとき
息を吐くと外肋間筋が縮んで、胸腔がもとの状態に戻ります。
同時に、横隔膜がドーム状に上に引っ張られるため、腹腔ももとの形に。
水風船も押している手をゆるめたら、もとどおりになりますよね。
肺は横隔膜に押し上げられて小さくなり、中の空気が外に押し出されるしくみです。
医学の学習用3Dアニメ↓↓↓呼吸の仕組みをで前後左右から見せてくれてます。
死んだ呼吸?!
人の安静時の呼吸量は、450~500ml。
よく見るペットボトル1本分の空気を、常に出し入れしていることになります。
とはいえ、吸った空気すべてが肺に届くわけではありません。
一部は換気に使われず気道にとどまって、そのまま外に吐き出されます。
「死腔量」と呼ばれるこの空気の量は、一般的におよそ150ml。
つまり、実際に肺が換気している空気量は300~450mlということに。
ところが、この死腔量は呼吸が浅くても深くても150mlであることがわかっています。
ということは、1回あたりでどれだけ大量の空気を吸い込むか、というのがポイント。
呼吸の浅い人が必要な換気量を確保するためには、多くの回数の呼吸をしなければなりません。
ぜひ、ふだんからゆったりと深く呼吸することを心がけて、体内に効率よく酸素をいきわたらせましょう。
横隔膜を意識しよう!
歌うときは腹式呼吸が大切だと以前にもお伝えしましたが、それには今回ご紹介してきたように、横隔膜の動きが大きく関わっています。
歌の練習中にはぜひ、横隔膜の動きを意識したりイメージしたりしてみてください。
しかしそのためには、ふだんから正しい呼吸や姿勢が当たり前にできていることが大前提。
というのも、横隔膜もストレスや浅い呼吸のクセなどによって筋力が低下すると、上手に働かなくなってしまうのです。
また、ここでご紹介したようなイラストや標本で見る肋骨はきれいな左右対称ですが、実際には多くの人はゆがみなどから非対称になっているのだそう。
ボーカリストは体が楽器です。
日ごろから健康的な生活を意識して、よい良い歌声になることを目指しましょう。
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