登場人物が急に歌いだす、あの感じがなんとも…。
音楽を志す人には特にオススメだよ。
そもそもミュージカルとは?
まずはミュージカルのルーツや特徴、国内事情などを、ざっくりとみていきましょう。
ミュージカルってどんなエンタメ?
そもそも「ミュージカル」とは、「ミュージカル・シアター(musical theater)」の略。
歌とダンスを生かした演劇や劇場、映画のことを指します。
通常の演劇に、歌や踊りを演出として加えたものと違って、芝居・歌・ダンスが一体となった表現によって進行するのが特徴です。
また、ミュージカルは大きく2タイプに分かれます。
ひとつは、「ブック・ミュージカル」と呼ばれるストーリー性の高いもので、『オペラ座の怪人』や『マイ・フェア・レディ」などがこれ。
もう一方は「ブックレス・ミュージカル」といって、ストーリーを追わないスタイル。
『キャッツ』や『コーラス・ライン』などが、ブックレスに当てはまります。
起源はヨーロッパ
ミュージカルのルーツは、ヨーロッパのオペラ。
オーケストラの演奏と歌唱で表現した、大衆演劇のことです。
が、大衆といっても実際は都市部に住む商人や知識人、何より貴族のための娯楽。
高価で高尚な芸術という位置づけだったため、シーズン席を抑えた富裕層たちしか観ることができませんでした。
そんなオペラを、大衆でも楽しめる形に変化させたのがオペレッタです。
オペラに比べて上演時間が短い代わりに、リーズナブル。
カジュアルで娯楽性が高く、誰にでも理解しやすい表現が多くの庶民に支持されました。
そして、19世紀にアメリカに渡ったオペレッタが、バラッド・オペラやバーレスクといった色々なショーと融合し、ミュージカルが誕生。
クラシック音楽を使うオペラやオペレッタに対して、ミュージカルではジャズやロック、ポップスなどが使われるのは、こうした背景からです。
ミュージカルの特徴
ミュージカルは2~3時間の上演が一般的で、間に15分くらいの休憩を挟んだ2幕構成になっています。
キャストの人数は作品や劇場の規模にもよりますが、有名作品ともなれば50人を超えることも。
それでも十分ではなくて、1人で何役もこなす”掛け持ち専門キャスト”がいる作品も珍しくありません。
また、ミュージカルはオーケストラやバンドの生演奏も魅力。
舞台の手前や下から、迫力ある音で作品を盛り上げます。
ところが、劇団四季をはじめとする日本のカンパニーでは、残念なことに録音音源が使われることがほとんど。
採算が合わないと苦しいのでしょうが、逆に生演奏が当たり前になれば、日本のミュージカル界ももっとファンが増えるかもしれませんね。
日本のミュージカル事情
オペラやバレエといった西洋の文化をルーツに持つミュージカルは、日本人が母国語で表現するのには、そもそも不向き。
アメリカやイギリスとの集客力の違いや、ほかにもさまざまな理由があって、簡単にロングラン公演もできません。
そんな恵まれない環境ですが、日本のミュージカルも、昔に比べるとだいぶ地位が向上した印象です。
興味のない人でも、「劇団四季」と「宝塚歌劇団」の2大巨頭が、長年にわたって日本の舞台芸術を引っ張っているのは知ってるはず。
また、山崎育三郎や新妻聖子といった人気俳優たちは、テレビや映画でも活躍しています。
さらに、最近ではミュージカルの新ジャンルがムーブメントに。
人気ゲームやアニメを原作とした、いわゆる「2.5次元ミュージカル」です。
それまでミュージカルとは縁のなかった新たな層が、『刀剣乱舞』や『テニスの王子様』などの舞台を観に、劇場を訪れるようになりました。
だけど、日本で進化したと考えれば、これも全然アリでしょう。
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ミュージカルの歴史
続いて、ミュージカル発展の歴史をざっくりご紹介。
世界最古のミュージカル作品って?
所説ありますが、ミュージカルが現在のスタイルで上演されたのは、1866年の『The Black Crook(黒い悪魔)』が世界初だといわれています。
ストーリーとしては、ロマンティック・コメディと呼ばれるジャンル。
音楽は当時の流行歌を中心として、そこに新曲が加えられました。
しかし、当時の人々の心を掴んだのは何より、画期的な演出。
観客の目の前でセットが早変わりし、ミニスカートや肌色のタイツなど露出度の高い衣装をまとった女性たちがバレエを踊る…。
ブロードウェイでの初上演後、そのまま474公演続くロングランとなり、そのあと何年も各地を回る大規模ツアーが行われるほどの大ヒットとなりました。
ブロードウェイ黄金期とトニー賞の誕生
『エニシング・ゴーズ』を手掛けたコール・ポーターや、『ポーギーとベス』のジョージ・ガーシュウィン、『王様と私』や『サウンド・オブ・ミュージック』のロジャース&ハマースタインなど、1920年代から、ブロードウェイで多くの大作曲家が活躍しました。
彼らの作品は、今なお多くの人に愛されています。
一時は世界恐慌のあおりを受けますが、それを抜けた1940~60年代半ばまでは、ブロードウェイのいわば黄金期。
演劇・ミュージカルの最高栄誉「トニー賞」が創設されたのも、この時期です。
1947年の記念すべき第1回目の受賞者は、映画『カサブランカ』などで知られるレジェンド女優、イングリット・バーグマンでした。
60年代~のウェスト・エンドと90年代~ディズニー作品
一方、1960~80年代の英ウェスト・エンドには、天才アンドリュー・ロイド=ウェバーが登場。
彼は『キャッツ』や『オペラ座の怪人』、『エビータ』をはじめ、次々と大ヒット作を生み出しました。
ウェスト・エンドで生まれたこれらの作品が、いまだにブロードウェイでも定番の舞台となっているのは、ご存じの通り。
そして1990年代半ばになると、あのディズニーがブロードウェイに進出。
『美女と野獣』や『ライオンキング』など、ヒット映画を次々と舞台化し、ミュージカルのファンを増やすことに成功しました。
日本でも劇団四季によって上演されていて、どれも人気作になっています。
ディズニーの影響力ってやっぱスゴイや。
ミュージカルの良作を味わおう
いきなり劇場に行くのに抵抗があっても、いまや家で気軽にミュージカルを楽しめる時代。
最後に、初心者にオススメしたい楽曲&映画をご紹介するので、ぜひいちど観て・聴いてみてください。
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CATS(キャッツ)より『Memory(メモリー)』
作品自体を観たことがない人でも、冒頭の「メェ~モリィィ~♪」だけは歌えるという、知名度の高い名曲。
ウェスト・エンドでもブロードウェイでも第一線、ミュージカル界を代表する大女優エレイン・ペイジのすばらしい歌唱でご覧あれ。
サウンド・オブ・ミュージックより『My Favorite Things(私のお気に入り)』
ジャズをはじめ、いろんなジャンルのミュージシャンが世界中でカバーしているスタンダード曲。
JR京都のCMでもおなじみですね。
このミュージカル映画からはほかにも、『ドレミの歌』や『エーデルワイス』など、たくさんの優れた楽曲が誕生しました。
Annie(アニー)より『Tomorrow(トゥモロー)』
子供が主役のミュージカルといえば、真っ先に思いつくであろうアニー。
映画化もされてますが、ここは本場ブロードウェイの子役の堂々としたパフォーマンスで。
澄んだ歌声に元気がもらえます。
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ヘアスプレー(2007年公開)
オリジナルは1988年の映画で、2002年にブロードウェイでミュージカル化されました。
そして、その舞台を2007年に映画化したという、1周まわったミュージカル映画です。
人種差別にもルッキズムにも負けない前向きな主人公が、みんなをハッピーにしてくれます。
クラシックなファッションや、ママ役(!)のジョン・トラボルタにも注目。
ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年公開)
アイスランドの歌姫、ビョークが主演と音楽を手掛けた作品。
「衝撃の問題作」という言葉がこんなにしっくりくる映画もないでしょう。
主人公が現実逃避するシーンでは、音楽もちょっと前向きなのですが、全編を通してとにかく暗い(苦笑)。
不器用で純粋すぎる彼女の生きざまが、観る人に強烈なインパクトを残します。
シカゴ(2002年公開)
人気ミュージカルの映画版で、レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギアという豪華俳優陣が主演しています。
1920年代のシカゴを舞台に、スキャンダルを利用して成り上がる歌姫たちと、それを助ける敏腕弁護士が織りなす、愛と欲望のストーリー。
2003年のアカデミー賞で、作品賞を含む6部門を獲得しました。
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ディズニー映画については、別ページをご覧されたし。
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ハッピー・フィート(2006年公開)
歌が命の皇帝ペンギンの国を追放された音痴の主人公が、自信を取り戻す冒険ストーリー。
アカデミー賞の、長編アニメ映画賞を受賞しました。
タップ界のスター、セヴィアン・グローバーが振り付けをしたダンスシーンは胸アツ。
声優には、イライジャ・ウッドやロビン・ウィリアムズ、ヒュー・ジャックマンをはじめ、豪華キャストがそろっています。
トロールズ ミュージック★パワー(2020年公開)
世界での興行収入が385億円という、2016年公開『トロールズ』(日本では劇場未公開)の続編です。
カラフルポップな世界で暮らす妖精トロールたちが、歌って踊ってハグをして…とにかくかわいくてハッピー。
主演を務めるジャスティン・ティンバーレイクが、2作品の音楽プロデュースもしています。
1作目もオススメですが、メアリー・J・ブライジやオジー・オズボーンなどゲスト声優が豪華で、選曲センスの光る2作目まで観てほしい。
SING/シング(2016年公開)
経営が立ち行かなくなった劇場が、起死回生を狙って歌のコンテストを開催することに。
そこへ集まった個性的な動物たちが、それぞれの人生逆転劇を繰り広げます。
劇中歌は、どれも人気ミュージシャンたちのヒット曲ばかりなので、観ていて一緒に歌いたくなるはず。
続編を含めて、豪華な日本語吹き替えキャストも話題になりました。
ミュージカル特有の“歌と台詞との中間”的な表現からは、たくさんのことが学べるよ。