むやみに声を大きくしようとしたら、のどを痛めるよ。
のどに無理のない声の響かせ方
のどに負担をかけずに声量アップを狙うなら、声の響かせ方をマスターするのが近道です。
では、その声を「響かせる」というのはどういうことなのでしょうか?
音には空間が必要
声もふくめて音というのは、空間がないことには響きません。
たとえば、ギターやバイオリンは弦の振動で生まれた音が、丸みを帯びた空洞のボディに響くことによって美しい音色に変わります。
つまり、音を響かせるには空間が必要なのです。
人間の声も同じ。
声帯が振動することによってできた声が、身体の中にある空間に反響することで、「倍音」が生まれて大きくなります。
倍音とは
音の高さを決めるのは周波数ですが、基本となる周波数のほかにも2倍・3倍…と倍数で振動する音がいくつも存在しています。
倍音というのはこれらの音のこと。
高い周波数を持つので、残念ながら倍音そのものは人間の耳では聞き取ることができません。
しかし、同じ高さの音でも楽器ごとに、または楽器の素材によって音色が違って聞こえるのは、それぞれの倍音が違うからです。
共鳴腔(きょうめいくう)とは?
ギターやバイオリンのボディのように、人間の身体の中にも声が反響する空洞部分があり、これを「共鳴腔(きょうめいくう・きょうめいこう)」といいます。
この共鳴腔と呼ばれる空間に歌を共鳴させればさせるほど、歌声を大きく響かせることができるのです。
共鳴腔は身体の中に数か所あって、肺や気管、喉頭も正確にはそれに数えられますが、歌の共鳴に大切なのは3か所。
「咽頭」・「口腔」・「鼻腔」です。
声の響きに自信のない人は、いちどボイトレの体験レッスンでみてもらうと良いでしょう。
歌の共鳴に大切な3つの空洞
つづいて、ボーカリストに重要な3つの共鳴腔について、それぞれ詳しくみてみましょう。
咽頭腔共鳴(いんとうくうきょうめい)
「咽頭腔(いんとうくう、いんとうこう)」があるのは口の奥。
声帯の上にあるので、順番的に3か所のうちで一番初めに声が通る共鳴腔がここになります。
ほかの2か所の共鳴腔に届くのはこの咽頭腔を通った後の声なので、ベースの声が作られる空間といっても過言ではないでしょう。
また咽頭腔はその位置だけでなく、形も大きさもじゅうぶんな空洞。
そのうえ筋肉で大きさをコントロールすることもできるので、ボーカリストにとってもっとも重要な共鳴腔といえます。
口腔共鳴(こうくうきょうめい)
「口腔(こうくう、こうこう)」は口の中の空洞で、くちびるの内側から喉までを指します。
ボーカリストにとって最も重要な共鳴腔が咽頭腔だとしたら、2番目に大切なのがこの口腔でしょう。
人間は口腔の形を変えることによって、「あいうえお」という母音を発音しています。
また、口腔は声の表情にも大きく影響していて、一般的に口を横に開いた時は明るい響きになり、縦に開いた時には暗い響きになります。
目で見やすいので、比較的コントロールがしやすい共鳴腔です。
ちなみに、口の開き方については別ページで詳しく解説してます↓↓↓ 口の開け方は歌にとって大切ですが、口を大きく開ける=正しい発声方法ではありません。そもそもなぜ口の開け方が重要なのか、また正しい口の開け方などを解説します。響きの良い表情豊かな歌を歌いましょう。 続きを見る
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鼻腔共鳴(びくうきょうめい)
鼻の奥にある空間が、「鼻腔(びくう、びこう)」です。
「な行」や「ま行」、「ん」の発音をするときは鼻に息が通るので、自然と鼻腔が共鳴しています。
高音の発声法としても有効です。
他の音の発音でもジャンルによって、たとえばカントリーミュージックなどではわざと鼻腔共鳴を多用した歌い方をすることも。
声を鼻にかけるかどうかは、鼻腔で調整することが可能なのです。
共鳴腔を上手く使おう
空間が広いほど音が響くように、共鳴腔も広ければ広いだけ響きやすくなります。
3つの共鳴腔を広げるポイントを知って、共鳴する感覚をつかんでいきましょう。
咽頭腔を響かせよう
咽頭腔を広げるには咽頭位置、つまり喉仏を下げること。
声帯で生まれた声が口から出るまでの距離が長くなるので、共鳴空間が保たれて、声に太さや深みができます。
なお、咽頭腔共鳴は下方向に響くので、「胸に響かせる共鳴」とか「胸腔共鳴」などとも呼ばれます。
人によっては胸に響かせるように意識することで、上手く咽頭腔共鳴がコントロールできるようになることも珍しくありません。
低い声で「ウー」と発声してみましょう。
すると、胸や喉仏がビリビリと共振しているのがわかるはず。
これが咽頭腔共鳴です。
口腔を響かせよう
口腔というと口の中の空洞全体を指しますが、中でも声の響きに特に重要なのが「軟口蓋」です。
口腔共鳴を左右する部分なので、口腔共鳴のことを「軟口蓋共鳴」と呼ぶこともあります。
軟口蓋は口の天井にある骨のない柔らかい部分のことで、食事をしたときに食べ物が鼻の方に流れないように、上がって蓋をしてくれる部分です。
舌の先でも確認できるでしょう。
響きを保ちながら発音をクリアにするには、この軟口蓋の使い方がポイントで、上手く使えるようになると喉の力も抜けやすくなります。
中音域で「アー」と発声してみましょう。
このとき、軽くあくびをする感覚で舌の奥を下に凹ませてください。
自分が思ったより高めの音が聞こえたら、口腔共鳴ができています。
鼻腔を響かせよう
口腔共鳴では軟口蓋が上がっているのに対し、鼻腔共鳴のときは軟口蓋が下がった状態です。
鼻と喉の間に空気の通り道ができて息が鼻に抜けるので、声がこもったり鼻声になったりします。
また、咽頭腔共鳴は下方向の響きなのに対し、口腔共鳴と鼻腔共鳴は上方向の響き。
声を、目頭の間(前方斜め上)から後頭部(後方斜め上)あたりに当てるイメージで発声します。
口を閉じて「ンー」とハミングしてみましょう。
鼻に軽く触れてみて振動していれば、鼻腔共鳴ができている証拠です。
共鳴腔をバランスよく響かせよう
咽頭腔・口腔・鼻腔それぞれの共鳴腔を響かせる感覚がつかめてきたら、あとは3か所がバランス良く響くことが目標です。
高音域で「イー」と発声してみましょう。
3つの共鳴腔は別々に響くのではなく、すべてが同時に響いているはず。
同じ音の高さで同じ発音をするのにも、たとえば鼻腔を8割にして咽頭腔と口腔を残りの2割にするなど、共鳴バランスを意識的に変えてみると良いトレーニングになります。
なお、共鳴の練習をするときは腹式呼吸で行うことを忘れずに。
なぜなら、息の量や圧がある程度ないことには共鳴を実感することが難しいからです。
腹式呼吸をしているのに共鳴の感覚がつかめないという人は、腹式呼吸が間違っている可能性も。
ぜひ呼吸法から見直してみてください。
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