ウォーミングアップならやったけど?
クールダウンとは
競技に限らず、アスリートたちは普段から準備運動だけでなく、整理運動も行うのが当たり前。
ボーカリストも、歌う前にも後にも自身の身体をケアすることで、パフォーマンスの向上やケガの予防につながります。
そもそも「クールダウン」って?
一般的に、クールダウン(整理運動)というのは、はげしい運動をした後にする軽い運動のこと。
ゆっくりと筋肉をほぐしリラックスさせることで、全身への負担が軽減し、疲労が残りにくくなります。
逆にこれをしないと、体内に乳酸などの疲労物質が蓄積して筋肉が硬くなるので、筋肉痛やケガを発症しかねません。
また、急に運動を止めると筋肉内の血液が循環しづらくなりますが、軽い運動によって血流が促進されると、筋肉にも酸素や栄養が採りこまれます。
つまりクールダウンには、筋肉の柔軟性を回復させるだけでなく、運動によって傷ついた筋組織の修復を促す効果があるのです。
ボーカリストの皆さんも、せっかくのトレーニング効果を無駄にしないため、さらにポリープや声帯結節といったトラブル予防のためにも、ぜひクールダウンを習慣にしてください。
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いつ・どのくらいやればいい?
アスリートがクールダウンにかける時間は、5~15分くらいが効果的といわれています。
歌の場合も、可能であれば10~15分かけるのが理想ですが、そこまで時間が取れないときも、5分くらいは確保しましょう。
また、タイミングとしては歌い終わったらすぐ、遅くとも30分以内。
筋肉が緩んで伸ばしやすいため、喉周りの筋肉が冷えないうちに行うのがポイントです。
少しずつ負荷を減らすような軽い発声に移っていって、歌う前の状態に戻しましょう。
声帯は無痛神経
声枯れや風邪のときなど、扁桃腺あたりが腫れて痛みを感じた経験は、誰にでもあるはず。
でも、歌っていて「声帯が痛い」と感じたことはあるでしょうか?
実は、声帯の筋肉は「無痛神経」という痛みを感じない神経でできてきます。
そのため、声帯はかなり酷使した状態であっても、自分では疲労や痛みに気づくのが難しいので、日頃から注意が必要です。
スポーツをしていて、腕や足の筋肉が疲れたらその日のトレーニングを止めることができますが、声帯の筋肉にはそれができません。
だからこそ、歌った後は意識的に、クールダウンで疲労物質を筋肉の外に出してあげる必要があるのです。
歌った直後のクールダウン:おすすめ3種
ここからはいよいよ、歌った直後にやるべき具体的なクールダウン方法をご紹介します。
①リップロール
唇を閉じた状態で息を吹いたときに、「プルルルルルルル…」と唇が高速で震えるのが、「リップロール」。
「リップトリル」とも呼ばれる、すぐれたトレーニング方法です。
ウォーミングアップとしても紹介しましたが、表情筋や喉の筋肉をほぐす効果が高く、クールダウンにも非常にオススメ。
最初のうちは長く続かないかもしれません。
その場合は、口角を少し指で持ち上げるとやりやすくなります。
なお、クールダウンでは、音程も長さも無理する必要はありません。
楽に出せる高さの音(またはそれの1音上くらい)から始めて、半音ずつゆっくり下げていきましょう。
もちろん、音程をつけないで息だけで出してもOKです。
②エッジボイス
「ブツブツ」とも「ガラガラ」とも聴こえる不思議な声です。
声帯に余計な力が入っていると出せない音なので、クールダウンにピッタリ。
日本では「エッジボイス」という名前で知られていますが、英語では「ボーカルフライ(vocal fry register)」と呼ばれます。
「声帯閉鎖筋」を鍛える効果があるため、声帯閉鎖の練習としても定番の発声法です。
クールダウンにおいては、楽な音程&楽な母音(あ・い・う・え・お、どれでもOK)でロングトーン。
閉鎖筋をほぐしてあげましょう。
出し方は、ふつうに「あー」と発声してどんどん音程を低くすると、声がくっきりしなくなるポイントにぶつかるはず。
それが、エッジボイスです。
イメージしづらい人も、映画「呪怨」のモノマネをするうちに、「あ゛あ゛あ゛あ゛」とできるようになるパターンも多いのだとか。
海外の先生が解説してるレッスン動画↓↓↓日本語字幕つき
③ストレッチ
歌う前にも後にもストレッチをして、身体をほぐしましょう。
クールダウンとして優先して緩めたいのは、首周り。
時間に余裕があれば、さらに腕や肩、腰を回して全身をリラックスさせましょう。
やり方はウォーミングアップと同じです。
1:頭を前後・左右に傾ける。
2:首をゆっくり回す(逆回転も)。
3:首のすじとあごの下を手でほぐす。
歌ったその日のクールダウン:3つのポイント
ボーカリストなら1年365日、いつも喉を気遣った生活を送るのが理想的。
「いつの間にか、ケアがおろそかになりがち」という人も、練習や本番などで歌ったその日1日くらいは、意識的に喉を労わってあげましょう。
①とにもかくにも水分補給
歌う前・最中・後、そして日常生活でボーカリストが最も忘れちゃいけないのが、水分補給。
声帯をスムーズに振動させる、つまり声を生み出すためには、動きを滑らかにしてくれる薄い粘液の層が欠かせません。
「あ、だから水分補給が大切なのね!」
と思ったアナタ、残念ながらそんな即効性はないんです。
人間の体の構造上、飲んだ水がそのまま声帯に届くわけではありません。
粘液が分泌されるには、摂取した水分が先に消化器系で処理される必要があるのです。
喉の渇きを感じるころには、すでに脱水症状は始まっていて、粘液が濃くなっています。
すると声帯をスムーズに動かす助けができず、声質が悪くなったり声帯の故障を引き起こしたりしかねません。
アフターケアに限らず、日頃から水分補給を意識しておきましょう。
実は【裏技】があって、吸入器なら直接的に水分が声帯に届きます↓↓↓ただし、粒子が細かいことが条件。
②のど飴/スプレー/ハチミツ
歌った後、喉に痛みを感じたら、のど飴や喉スプレーを使うという人は多いはず。
ご存じの通り、これらのアイテムには喉の炎症を鎮める成分が入っています。
痛みを感じた時に限らず、練習や本番で歌った後はのど飴を口に放り込んでください。
無自覚の炎症を抑える意味でも、また、わずかな炎症部分から風邪や病気のウィルスに感染するのを防ぐためにも、有効です。
しかし実のところ、飴やスプレーに比べるとお値段は張りますが、いちばんのオススメはハチミツ。
自然由来の安心感があり、何より殺菌作用・粘膜保護といった効果の高さでいえば、むしろ高コスパ。
ネックとなる持ち運びに関しても、個包装タイプならポケットに入れておいて、移動先のスタジオやライブハウスですぐ口にすることができます。
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③大声出さない&しっかり眠る
大声での会話が喉に負担をかけることは、いうまでもありません。
練習や本番が終わったら、大声に限らず、できるだけ声を出さずに声帯を休めてください。
とはいえ、そのまま1日中だれともしゃべらないというのは、なかなか難しいもの。
30分とか1時間とか、一定の時間だけ沈黙を保って、おしゃべりはそのあと。
これだけでもだいぶ違います。
しかし、声帯を休めるのにもっとも大切なのは、睡眠です。
喉にとってはもちろん、体調を管理する意味でも睡眠不足は大敵。
また、いくら睡眠時間をじゅうぶん確保していても、寝ている間に喉を乾燥させてはいけません。
加湿器などで寝室の湿度を調節したり、マスクを着けて寝るなど、乾燥にはじゅうぶん注意しましょう。
調湿やおすすめグッズについては、こっちで詳しく解説してます↓↓↓
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