ロックやジャズはもちろん、ブルースがなかったら、今あるポピュラー系の音楽はどれも存在していなかっただろうね。
ブルースとは?
ブルースという音楽のジャンルは知っていても、どんな音楽なのかちゃんと説明できる人はそう多くないでしょう。
しかし、ブルースはポピュラー系の音楽すべてのルーツともいうべき重要な存在とされています。
それはなぜか?
まずは、ブルースの意味や種類をみていきましょう。
ブルースとは
ブルース(Blues)は、数ある音楽のジャンルのひとつです。
悲しみや孤独感を歌で表現するので、名前も悲しい気分を色で例えた「blue」という単語に由来します。
前身はもちろんずっと昔から存在していたはずですが、ブルースが音楽史に初めて登場するのは19世紀末になってから。
アメリカに奴隷制度があった時代に、アフリカから無理やり連れて来られた黒人たちが歌っていた、「ワークソング」や「ハラー」と呼ばれる音楽が起源になっています。
当時のアフリカ系アメリカ人(黒人)たちにとって、これらの音楽はただの娯楽ではなく、厳しい生活を一時でも忘れるための手段のひとつ。
つまり、奴隷として働かされていた黒人たちにとってブルースとは、魂の叫びともいえる大切なものだったのです。
ブルースの種類
ブルースは地域ごとに歌い継がれていたため、それぞれに特徴が違います。
白人音楽の影響の大きさが違うのも興味深いところです。
細かくいうともっと分かれるのですが、おおまかな分類と音楽史に登場する年代は以下のようになります。
- カントリーブルース(19世紀後半~1940年代)
- シティ・ブルースとクラシック・ブルース(1920~40年代)
- シカゴ・ブルース(1940年代初頭~)
- アーバン・ブルース(1940~50年代)
- モダン・ブルース(1960~80年代)
ブルースとギター
自分で曲や詩を書いてギターで弾き語る…
今では当たり前のこのスタイルは、初期のブルースマンたちが歴史上はじめてだったとも言われています。
もちろんストリートレベルでいえば、もっと前から名もなきミュージシャンたちが、こうした総合的な音楽表現をやってのけていたかもしれませんが。
今でもブルースといえばギターのイメージが強いのも、初期のブルースマンたちの影響。
といっても、貧しい黒人たちにとっては比較的ギターが手にいれやすい楽器だった、というのがホントのところです。
↓↓↓伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソン。27歳という若さで亡くなりましたが、後世のロックンロールは彼なくして生まれなかったでしょう。
ブルースの歴史
ブルースは、アフリカ系アメリカ人たちの苦難の時代と切り離しては語れません。
ここからは、ブルースが生まれた背景となるアメリカの歴史をみていきましょう。
奴隷制度
アメリカで1640年代から、合衆国憲法で禁じられる1865年まで合法だった奴隷制度。
強制的にアフリカから連れてこられた黒人たちは、奴隷として綿花のプランテーションなどで働かされていました。
彼らは過酷な労働の中で祖国を思い、故郷の旋律を歌うことで日々の辛さを乗り越えようとしていたのです。
ブルースは黒人たちの苦難の歴史から生まれた、戦いと誇りの音楽。
その意味を知らずしてブルースを奏でることはできない、と言われるほど、ブルースはアメリカ史と密接につながっています。
南北戦争
南北戦争とは1861~1865年、奴隷制度を維持したい南部の州と、奴隷制度に反対する北部の州が対立したアメリカ合衆国内の戦争です。
最終的に北部が勝利したため、奴隷たちは解放されたのですが、アメリカにおける人種差別や黒人差別はむしろここからがスタート。
北部に、奴隷ではなくなった黒人たちの安い労働力が流れ込んだため、職にあぶれた白人たちの怒りの矛先が黒人たちに。
一方、北軍が撤退した南部でも黒人たちは差別やリンチの対象になり、権利を制限する州憲法が次々と作られました。
南北戦争が終わって以降も、公民権運動が盛んになる1950年代までおよそ1世紀という長い期間、黒人に対する差別やリンチが続いたことになります。
マディ・ウォーターズは、グラミー賞にも6回輝くブルース界のレジェンド。のちに大人気ロックバンドの名前の由来になった曲がコレ↓↓↓「転がる石」が黒人たちの「自由」のたとえにも聴こえますね。
ブルースという音楽
ブルースという音楽が初めてレコーディングされたのは、1920年のメイミー・スミス『Crazy Blues』だと言われています。
その後ブルースのリズムや精神は、ロックミュージックへと受け継がれました。
白人音楽というイメージのロックンロールも、そのルーツはブルースにあるのです。
ブルースは黒人文化のすべて
そんなブルースですが、初期のブルースは黒人たちがアフリカから持ち込んだコール&レスポンスや黒人霊歌、教会の讃美歌などの要素を全て取り入れた音楽だといえます。
コール&レスポンスとは、その名の通り呼びかけと応答。
「ワークソング」や「フィールド・ハラー」といったブルースのルーツである黒人音楽は、このコール&レスポンスのスタイルです。
ワークソングは労働時の掛け声のような音楽で、舟をこいだり木を切ったりなど大勢で作業するときに、リズムを取る意味があったのだとか。
一方のフィールド・ハラーは、ワークソングのようにリズムがあるものではなく、別々の場所で働く人同士で歌っていたもの。
誰かが声を上げると、違う場所に居る誰かがそれに応答するという、思いつくまま自由に歌うスタイルです。
ただのブルーな気分じゃないブルース
ここまで、ブルースは黒人奴隷たちの魂の叫びであるとか、ブルーという名のとおり悲しさや孤独感を表現するものだとか説明してきました。
とはいえ、ブルースという音楽は「悲しい」とか「つらい」とかを、単純に歌ったものではありません。
歌詞を見ると、悲しみというより愚痴を言っているようなものが多く、ストレートな悲哀ではなくむしろ力強さや陽気さすら感じさせます。
“暗さ”と“明るさ”という、相反する感情が同時に放たれているところが、ブルースという音楽の魅力なのです。
ブルーノート
それまで、西洋音楽は長調(メジャー)と短調(マイナー)という2種類に分かれ、長調なら長調の範囲内で、短調なら短調の範囲内で和音(コード)や旋律(メロディー)を作るのが基本でした。
現代ポピュラー音楽においても、この基本はずっと守られています。
ところが、この基本ルールを壊したのがブルース。
3度・5度・7度がフラットした「ブルーノート」が使われるのが、ブルースという音楽の大きな特徴です。
ちなみに厳密にいうと、ブルーノートはクォータートーン(Quarter Tone) でプレイされるもの。
前述の楽譜でいうと、たとえば3度の音はE♭はではなく、EとE♭の間の音になります。
そのため、ピアノなどの楽器ではこの音程は表現不可能。
クォータートーンはギターやボーカルのほか、サックスやフルートで出すことができます。
音階を解説したページでも説明したように、長調は聴く人に明るいイメージ、短調は暗いイメージを抱かせます。
しかしブルースは、長音階(メジャースケール)の和音の上に、短音階(マイナースケール)で使われるメロディーを重ねるのです。
不思議な心地よさを感じさせるブルーノートは、ジャズやロック、いまやJ-Popにまで受け継がれています。
今日からおいらもたくさん聴いてみよっと。
↓↓↓最後にB.B.キングの代表曲を。ブルースに詳しくない人にまで名前が知られる巨匠ですね。2015年に89歳で亡くなるまで、クラプトンをはじめ数々のギタリストに影響を与えました。